CODEX ZEPHYRVS

Sine doctrina vita est quasi mortis imago.

途中計算がうまくいって嬉しみしか感じない

いただきました(問題が解決したときのキメ台詞的なノリの発言)

昨日のこれ↓です
 \prod_{k=1}^{m-1} 2\sin \frac{k\pi}{m}.

もしかして同じ苦しみを背負って背負いすぎて悲しみがBose-Einstein凝縮してる人いないかとおもって調べてみました。Bose-Einsteinは凝縮を導く序詞

…いるんですねぇ( 'ω')

せっかくなので以下に計算方法をまとめてみることにしました。よかったら参考までに。


――――――――――


求める式を Pとおきましょう。とりあえずは Pをゴリゴリいじっていきます。
Eulerの関係式 \mathrm{e}^{\mathrm{i}x}=\cos x + \mathrm{i} \sin xから \sin x = \frac{\mathrm{e}^{\mathrm{i}x}-\mathrm{e}^{-\mathrm{i}x}}{2\mathrm{i}}が分かるので、これを用いましょう。

 P=\prod_{k=1}^{m-1} 2\sin \frac{k\pi}{m} = \prod_{k=1}^{m-1} \frac{\mathrm{e}^{\mathrm{i}\frac{k\pi}{m}}-\mathrm{e}^{-\mathrm{i}\frac{k\pi}{m}}}{\mathrm{i}}= \prod_{k=1}^{m-1} \mathrm{i}^{-1} \mathrm{e}^{-\mathrm{i}\frac{k\pi}{m}} \left( \mathrm{e}^{\mathrm{i}\frac{2k\pi}{m}}-1\right).

このように変形できます。
さて、総乗記号 \prod_{k=1}^{m-1}については、定義から「整数 k 1から m-1まで変化させた項を全部掛ける」という計算を行うことを示すので、

 P = \mathrm{i}^{-(m-1)} \exp\left( -\mathrm{i}\frac{\pi}{m} \sum_{k=1}^{m-1} k \right) \prod_{k=1}^{m-1} \left( \mathrm{e}^{\mathrm{i}\frac{2k\pi}{m}}-1\right) = \mathrm{i}^{1-m} \mathrm{e}^{\mathrm{i}\frac{\pi}{2}(1-m)} \prod_{k=1}^{m-1} \left( \mathrm{e}^{\mathrm{i}\frac{2k\pi}{m}}-1\right)
 = \mathrm{i}^{2(1-m)} \prod_{k=1}^{m-1} \left( \mathrm{e}^{\mathrm{i}\frac{2k\pi}{m}}-1\right) = (-1)^{1-m} \prod_{k=1}^{m-1} \left( \mathrm{e}^{\mathrm{i}\frac{2k\pi}{m}}-1\right)

と変形できます。2行目に移るときの式変形でもEulerの関係式を利用しています。既にごちゃごちゃしてきて悲しみが溢れてきましたね
さて、再び総乗記号の意味合いを思い出してみると、

 (-1)^{1-m} \prod_{k=1}^{m-1} \left( \mathrm{e}^{\mathrm{i}\frac{2k\pi}{m}}-1\right) = \prod_{k=1}^{m-1}\left(-\left( \mathrm{e}^{\mathrm{i}\frac{2k\pi}{m}}-1\right)\right) = \prod_{k=1}^{m-1} \left( 1-\mathrm{e}^{\mathrm{i}\frac{2k\pi}{m}}\right)

 -1を中に入れてあげても良いことが分かると思います。「お前だけ総乗記号の外側出とけ」とか言わないで、どうか仲間にいれてあげてください。
 \mathrm{e}^{\mathrm{i}\frac{2\pi}{m}} 1 m乗根(以下では \mathrm{e}^{\mathrm{i}\frac{2\pi}{m}} =: \xiと書きます)になっていることに注意しましょう。各 kに対して,  \xi^{k}はすべて 1 m乗根ですね。
ということで、

 P = \prod_{k=1}^{m-1} \left( 1-\xi^k\right) ― (☆)

となりました。

 1 m乗根… 1 m乗根…まさか…!!!とか言って以下のような変形を思いついたあなた、とてもつよいですね( 'ω')

ここで、 x^{m}-1因数分解を考えてみましょう。以下は有名な公式ですね:

 x^{m}-1 = (x-1)\sum_{k=0}^{m-1}x^{k}.

また,  1 m乗根 \xi^{k}たちを使うと以下のようにも書けます:

 x^{m}-1 = \prod_{k=0}^{m-1} (x-\xi^k) = (x-1) \prod_{k=1}^{m-1} (x-\xi^k).

これより

 (x-1)\sum_{k=0}^{m-1}x^{k} = (x-1) \prod_{k=1}^{m-1} (x-\xi^k) ― (●)

が分かります。この式は何を言っているかというと、「 \sum_{k=0}^{m-1}x^{k} \prod_{k=1}^{m-1} (x-\xi^k)って因数分解できるんやで」ということを言ってるんですね、聞こえました? ということで

 \sum_{k=0}^{m-1}x^{k} = \prod_{k=1}^{m-1} (x-\xi^k)

が成り立ちます。この式は、(●)の式を (x-1)で両辺割って求めたわけではないので、 x=1でも成立します。ということで、 x=1を代入してみますと、

 \prod_{k=1}^{m-1} (1-\xi^k) = \sum_{k=0}^{m-1}1^{k} = \sum_{k=0}^{m-1}1 = m

が得られました。最後にこれを(☆)の式に代入して

 P=m

と結論を得ます。(Q.E.D.)
お疲れ様でした。

――――――――――

これは"Morrie's Law"とかいうものだそうです。日本語では何と言えばいいんだろう…「モリー則」ですかね…?
途中の計算方法といい、結果といい、いい勉強になりました。